「ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-」レビュー
「安楽死」を手口にする猟奇殺人犯ドクター・デスの謎を追う。
先日映画館で見てきたので、レビュー書こうと思います。
(ネタバレを含みますので先を読む場合はご了承下さい)
130人もの患者を安楽死させた”実在の医師”をモデルに描かれた、という謳い文句に惹かれて視聴。
安楽死の是非や葛藤、末期患者の苦しみなどをテーマとした、重い内容かと思いきや、意外とそうでもなかった、というのが率直な感想だ。
「安楽死」で本人及び家族の痛みや苦しみから開放する、といった犯人の犯行動機。
それに対し警察側は「安楽死」は只の殺人、卑劣な犯行とする対比は面白かった。
犯人をミスリードさせようとする描写で盛り上げようとする場面があったのだが、”犯人が誰か”ということより”安楽死の是非”を視聴中は考えていたので、その演出からは「ああ、そっちね」といった感じで、刑事ドラマを見ている様な感覚に切り替わっていった。
日本の法律では「安楽死」は認められていないが、ドクター・デスの言い分として「自由に生きる権利・死ぬ権利」を説いているシーンがあり、そのあたりは興味深かったのだが、物語終盤で刑事の娘を「安楽死」させようとするくだりで陳腐になっていく。
死を望む末期的患者を「安楽死で救済する」という犯人の意図が、刑事の娘を狙う時には、巧みな心理操作で”安楽死を望ませた”といったマインドコントロールする場面が描かれ「救済では無く只の殺人」といった印象が濃厚となる。
他の安楽死させた患者も、心理操作されて死を望むようにさせられたと言うことになってしまうと、患者ではなく被害者という事になってしまったのが個人的には残念だ。
こうした猟奇殺人、サイコな殺人犯には確固たる信念や美学があったほうが、キャラクターとしても、作品としても魅力的になると思っているので、最終的に「安楽死は只の殺人」という安っぽいメッセージの作品となってしまった感じは否めない。
苦しむ末期患者に対しての安楽死の是非という物議を醸す内容が、安楽死は只の殺人ですと言わんばかりの結論で締めくくられた様な描写になってしまっていると感じてしまったのだ。
安楽死した患者・被害者は口々に「ありがとう」などと言う描写もあったが、犯人のマインドコントロールなシーンのせいで「洗脳された被害者」になってしまっているのでは無いだろうか。
ドクター・デスが患者を洗脳するような描写さえ無ければ、もっと考えさせられる良い作品になっていたと思う。
刑事の娘は洗脳しなくても「安楽死」を望むようにストーリーは作れたはずだし、敢えてそうしなかったのは、やはりそういうメッセージだったと言うことなのだろうか?
筆者は重いメッセージ性を期待して見ていたので、なんだか陳腐で軽い刑事ドラマになってしまってガッカリしたので、そうした「安楽死」を真剣に考えさせられるような作品を求めているのであれば見ないほうが良いかもしれない。
単純な刑事ドラマが見たいのであれば見ても楽しめると思う。